カタラータ・カルパ物語 ~1年目8・9月(その2)~

「社長、どうにか黒字にはなりましたが……」

関東七県に新潟県を合わせた八興行のレポートを眺めていた社長は、

「入りは四割から七割、か。」
「惨敗です。申し訳ありません」

謝罪の言葉に社長はレポートから顔を上げ、

「いや、貴方たちはよくやってくれたよ。急な話だったのに
 見事会場を押さえてくれたし、現場でもよく動いてもらった」
「社長、お言葉はありがたいですが今の私にはそれは」
「慰めにはならない、と。でもね霧子くん、僕は本心から言っている」

そう言って安そうな椅子から立ち上がり、

「僕は今回の興行前、一年は試合をせず育成をしたかった」

レポートを丁寧に二つ折りにしながら続ける。

「霧子くん、ウチの団体の選手はミミさん以外全部新人だろう?」
「はい」
「それも基礎もできていない子が半分以上だ。霧子くん、君が客の
 立場としてだよ、名も知らぬ技術もない選手ばかりの興行を
 見たいと思うかい?」
「それは……」

霧子は絶句する。

「でもね、こいつを見ると」

二つ折りにしたレポートを再び開き、

「各地で350から450程度の集客数だ。世の中には結構物好きがいるもんだ」

そう言ってふふふ、と笑う。霧子は黙って聞いている。

「素人に毛の生えた集団でこれくらい集まるなら上等だ。
 これなら来年春頃から巻き返せるよ」

霧子の耳にはその言葉に嫌味は感じられない。

「霧子くん、来月は関西を廻る。会場の手配をお願いするよ」
「え、来月も興行を?」
「当然だよ」

何を言っているんだという風に答える。

「社長のお考えでは本来、来年四月の旗揚げなのでは?」
「でももう旗揚げ興行打っちゃったからね。止まる訳にはいかないよ。それにね」

再びレポートを二つ折りにすると楽しそうに、

「選手があまりめげてないんだよね。客入りはまあアレな所もあったけど
 彼女たちは結構楽しんでいるようだったよ」

霧子が会場手配のために社長室を出る。
扉が閉まり、自信を取り戻したかのような足音が遠ざかるのを聞きながら、

「一人を除いて、だけどね。さて、どうやってケアしたもんかねぇ……」

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