カタラータ・カルパ物語 ~1年目8・9月(その1)~

7月に続き8月・9月と立て続けに新人を獲得したカタラータ・カルパ。
社長室では社長と秘書が雑談をしている。

「なかなか面白そうな子が来たね」
「そうですね」

まずやってきたのは柳生美冬。

「『賊が軍門に降ったと聞いて興味が湧いた』と来た時には驚いたな」
「私は壁に飾ってあるペナントに文句をつけた方が驚きましたよ」
「ああ、『日ノ本の団体の長が米国旗を掲げるは如何なつもりか』と
 言ったあれか。確かにそれも驚いたね」

続いてやってきたのは保科優希。

「保科さんは社長の望むような人材だったのですか?」
「いや、僕の思惑の外にある人物だったよ。でもね、森嶋くんと
 柳生くんがかなりぶつかっていたろう?それが彼女が入った途端に収まった」
「確かにそうですね」
「保科くんは不思議な人だ。自分の強さを外に出さず周りを強くするというか。
 僕にはないものを持っているような気がしてならない」

霧子は黙って上司の話を聞いている。

「先の事はわからないが、保科くんには長く世話になりそうな気がするな。
 そういう意味では彼女もまた龍なのかもしれない」

そこへ飛び込んでくるけたたましい笑い声。
秘書は声の主を見て苦い顔をし、若き社長は反対に笑みを見せる。

「カルパッチョさんお帰り。いやはや、面白い人材をたくさんありがとう」
「あんたの注文は難しくてあちこち探し回ったぜ、HAHAHA!」

再会を喜び合いながら手を握る二人。そこへ霧子が苦々しく声を掛ける。

「真岡さん、テレビで見ましたけど……。我が団体専属のあなたが
 イレギュラーとはいえ他団体の試合を裁くというのはどうかと思うのですが」
真岡 「HAHAHA、固い事言うなよ霧子ちゃん!俺はここの宣伝をしてやっただけだぜ?」
社長 「宣伝?」

秘書が反論してくると思っていた真岡は意外な顔で
――もっとも表情はマスクでわからないのだが、

「おいおい、お前が言うのか? 優希ちゃんが入ってこれで5人だ。
 今月旗揚げするんじゃねーの? 旗揚げ前に注目度を上げてきてやったんだぜ?」
「旗揚げなんかしない。ミミさんや半年いる斉藤くんはともかく、
 他の三人は基礎もなってない。少なくともあと半年は練習させないといけない」

その答えに真岡は大仰に天を仰ぐ。それを一瞥しながら霧子が続ける。

「社長、これは真岡さんの言うとおりかと。
 我が団体は設立して半年、未だ動きはありません。
 これであと半年動かないとなれば会社が立ち行きませんよ」
「俺は今までいくつも団体を見てきたが設立後半年以内に旗揚げしなかった団体はなかったぜ。
 その後がどうなったかは問題外にしてものんびりしすぎじゃねーか?」

真岡はマスクの鼻がきになるのか手をやり続ける。

「俺は今月旗揚げすると踏んでいたからここに戻ってきた。知っての通り九州にいたんだが
 そこに面白そうな子がいてな。まあ結構人見知りする子だったんだが」
「社長のお考えはともかく、このまま収入なしでは会社が潰れてしまいますよ」

二人が同時にまくし立てるのを難しい顔で聞いていた社長だが、

「わかったわかった。君たちの言いたい事はわかった。
 まあ確かに選手からもせっつかれている。今月から興行を始めよう」

うるさそうに言い二人に背を向けて立ち上がると、

「霧子くん、関東圏の会場を押さえてくれ。カルパッチョさんは選手に連絡を」

社長は二人が部屋を出て行くのを背中で聞きながら、

「時期尚早だと思うんだがね」

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