カタラータ・カルパ物語 第0話(その4)

「ああ~、やっぱり逃げられちゃったじゃないのよぉ~」

事務所で書類をダンボール箱に詰めながら一人嘆く秘書。

「無理矢理にでも面接させれば良かった~」

霧子は応募された書類を眺め、今日何度目かわからぬ溜息をつく。
高知・山口・埼玉・福岡、その上アンドロメダからも応募が来たのに。
『逃した魚は大きいわ』などと一人ごちながら手際よく書類を詰め込み、
ガムテープで箱に封をする。

ただ一枚、手元に残った書類を除いて。

「一人だけ残ってくれたけど……どうなのかしらね」

しばらくそれを眺めていたが、またもふぅと溜息一つ。
書類を社長のデスクにぽいと投げつけダンボール箱を持ち上げる。

「よいしょっ、とーーーっ!?」
「HAHAHA! いきなりハンサムがいて驚いたかいセニョリータ?」

扉へ振り返った秘書の目に飛び込んできたのは、赤と白を基調にしたマスクをした
うさんくさい男だった。霧子の手からダンボールが抜け、どんと大きな音を立てる。
足の上に落ちなかったのは幸運だったが、目の前の男を見ていると
落とした方がよっぽど幸運に思えた、と後に告白している。

「ここCatarata Carpaの事務所でしょ、そうでしょ?」
「あんた誰よ!?」
「俺かい、俺かい? よくぞ聞いてくれました。俺は」

男は大仰に言って言葉を切り、気になるのかマスクの鼻の部分を持ち上げる。

「HAHAHA! 俺は栃木一レフェリングの上手い男」
「もしもし、警察ですか? 不審者が侵入しているのですが」
「いきなり通報ーっ!?」

男は慌てて電話のフックを押さえる。

「おいおい冗談きついぜセニョリータ。俺はあんたんとこの社長に呼ばれて」
「うるさい変態仮面!
 あんたが不審者じゃなかったら世の中に不審者なんていないわ!」

そう早口でまくしたてるとフックに置かれた男の腕を払いのけ、
再び110番をしようとして何かに気がついたか手を止める。

「……社長に?」
「Si、その通りさ。レフェリーとして雇われたんだぜ」

霧子は上から下までどこまでもうさんくさい男を眺める。
紅白のマスクの額には「鯉」の字。フォントは何故か勘亭流。
上半身は無地のTシャツに暗い色のジャケットとここは普通だったが、
下はなぜかハーフパンツですねが剥き出しだった。

「……まあもうすぐ社長も戻られますし、その時確認させて頂きます。
 で、お名前は?」
「俺かい、俺かい? 俺は栃木一レフェ」
「それはお伺いしました。お名前は?」
「なんだよ、つれないねえHAHAHA! 俺の名はそうだなあ……」

男は言葉を切り、またも鼻の部分に手を掛ける。

「そうね、カルパ坊やとでも呼んでくれよHAHAHA!」
「あなたね、ここが広島だったら暴動もんよその台詞!」

言うが早いか秘書はガムテープをびぃっと切り取り、男の剥き出しの
すねに貼り付ける。

「喰らいなさい、秘書検定上級の必殺技を!」

叫ぶと思い切りガムテープを引き剥がす。

「ノオオォォォー! お、俺のチャームポイントのすね毛がぁっ!」
「チャームポイントの意味を辞書で引きなさいこの変態紳士が!」

男はその攻撃がよほど効いたのかすっかりおとなしくなった。
霧子は今日何度目かわからぬ溜息をつくと二つコーヒーを淹れ、
男の前に一つ置く。すねをしきりに撫でていた男は顔を上げると、

「ノォー……。毛が抜けたところが赤くぶつぶつみたいになったぜ、ほら」
「見せんでいい!」

男は結局「カルパッチョ真岡(もおか)」と名乗った。
団体名と栃木にちなんだ名前にしたのだろう。
霧子は疲れ果ててそれ以上問うのを止めた。

「前途多難ね。16ヶ月持つのかしら」

------------------------------------------------------------------

といった所で第0話は終わりです。
さて、これから少しゲーム本編をプレイしてきます。
なんせミミさん引き抜いたところから進んでないからな、HAHAHA!

では今日はこの辺で。Buenas noches!
拍手くださった方、ありがとうございました。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック