カタラータ・カルパ物語 第0話

栃木県日光市。那智の滝・袋田の滝と共に日本三大名瀑として
名高い華厳の滝。爆ぜる水飛沫が小雨のように降り注ぐも
男は微動だにせずそれを眺めている。

「こちらにおられましたか、社長」

ああ、と返事はしたが社長と呼ばれた男は振り向きもせず滝を眺めている。

「社長はここがお好きですね」
「あの滝を登ってみたいとは思わんか、霧子くん」
「あれをですか? 無理ですよ」

そうかな、と呟いて社長は初めて秘書の方へと体を向ける。

「準備は整ったかな」
「ええ。あとは団体名を決めて頂くだけです」
「それはもう決めてある。カタラータ・カルパ。これでいこう」

聞きなれない語感に秘書は小首を傾げる。

「スペイン語、ですか? もっと和風な名前にするかと」
「『臥龍館』とどちらか悩んだんだが」

そういってくるりと霧子に背を向け、後ろ手に組んで続ける。

「臥龍ならそこにはすでに龍はいる訳だ。しかし」
「まだ我々には一人の選手も居りませんね」

社長は再度半回転し、

「その通り。龍はまだいない。龍となっている人材もまたいない」
「そこで『カタラータ・カルパ』ですか」
「話が早いね。カタラータは滝だ。滝といっても小さいものではない。
 大きな、そう大きな滝だ。この華厳のようにね」

そこで社長は滝に眼をやる。霧子もつられて視線を向ける。

「カルパは鯉、だ」
「鯉、ですか?」
「そう、鯉。鯉の滝登りという言葉があるね。鯉が滝を登ると」
「龍になる、ということですか。なるほど……」
「龍になれる鯉はわずかかもしれないが、私は龍を育てたい」

滝から眼を離さずいう社長を霧子は見つめる。
口が達者なわけでも、コネがあるわけでもない。
会社の運営に関する知識もほとんどないであろう。
多少の体作りと打撃に関しての知識はあるようだが。

「良いお考えだと思います、社長」
「そうだろう!? そう思うよね!?」
「ええ、思いますとも。
 さあ、そうとなれば早く戻って鯉を探しましょう!」

そういうと霧子は社長の腕を掴み、引きずるように来た道を戻る。

「わわわ、霧子くん危ないよ!」
(会社の運営については私がやればいい。この人には……)
「ん、何か言ったかい?」
「いいえ、なにも!」


プロレス黎明期、栃木県に『カタラータ・カルパ』旗揚げ。


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ってな具合でリプレイ始めてみました。
進みは遅くなりそうですが、区切りのつくところまではやりたいなと。
そんなカンジで。

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