魔術師

吉原 「あの二人も力を付けてきていますし、どう転ぶか正直
    わかりませんでしたよ」

必殺のエメラルドブレスで佐尾山組を退けた吉原組。
試合後、通路でインタビューを受けている。

金森 「ガンガン来てたし、押されてたから危なかったですよ。
    今日はミミさんに感謝ですっ」
吉原 「今日は?いつもは感謝してないの?」
金森 「い、いやそんな事ないですよぅ!」

報道陣から笑いが起こる、和やかなインタビューだ。
それを通路の影で聞き耳を立てている小早川。

小早川(よく言うよ……。あたしは騙されないよ)

確かに試合は吉原たちが押されているように見えた。しかし、

小早川(肝心な所は全て避けてたし、食らうにしても位置取りが絶妙だよね)

佐尾山得意のバカヤロー・スライディングキックをわざと自軍コーナー側で
受けた場面を思い起こす。

小早川(あの位置で食らっても寝てれば麗子さん助けに来るもんね……。それと)

その金森の受けの強さ。ファンや選手たちの間からは、
『ミミ吉原は金森麗子を盾にして戦っている』などと言われているが、

小早川(信頼してないとできないよね、あれは)

タッグチームとして完成されている、としか思えない。

小早川(あたしは那月をあそこまで信用できるかな。それに那月もあたしを
     あそこまで信用してくれるの……?)

真壁 「なに難しい顔して突っ立ってんのよ」

小早川は思考を中断し、声の主を見る。

真壁 「どうせこの後何を食べるかくらいの事でしょうけど。
    いいわよねえ、たくさん食べても太らない貴方は」

小早川はいくら食べても大きくならない自分の身体にもどかしさを通り越え
腹立たしさまで覚えていたが、

小早川「まあそんなカンジだね。良かったら付き合わない?」

真壁はその台詞に驚いたように同期の顔を見たが、

真壁 「……遠慮するわ。見ているだけで太っちゃいそうだもの」

そう言って踵を返し、足早に控え室の方へと戻っていく。
相変わらずだなと小早川が苦笑していると真壁は突然振り返り、

真壁 「まあ、明日わたしの足を引っ張らなければ付き合ってあげてもいいわよ」
小早川「フン!それはこっちのセリフだよ!今日は早く寝て明日に備えておきなよ!」
真壁 「な、なによ!子供扱いしないでくれる!?
    ……コホン、あ、明日あんたが負けたら貴方のおごりよ!いいわね!」

小早川(変に気取らなきゃいいのにさ……)

一言の間に矛盾が出ている真壁の言動のおかしさをこらえながら、

小早川「逆にあたしが勝ったら那月、あんたのおごりだよ!」
真壁 「な、なによそれ!あたしが負けたらおごりならわかるけど!」
小早川「あたしは負けるつもりは無いよ、那月。それだけは覚えといてね」
真壁 「なにカッコつけてんのよ!」
小早川「あんたが言わないから代わりに言ってあげただけだよ。感謝して欲しいくらい!」



そして翌日。斉藤真田組vs真壁小早川組の試合が行われた。

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